久しぶりの論文紹介をさせてもらいます。Neurologia medico-chirurgicaという日本脳神経外科学会の発行する国際誌に2018年に名古屋大学から掲載された下記の論文です。英語ですがフリーでダウンロードできるので、ご興味のある方は全文を見て頂ければと思います。
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Clinical and Radiological Outcomes of Microscopic Lumbar Foraminal Decompression: A Pilot Analysis of Possible Risk Factors for Restenosis
Neurol Med Chir (Tokyo). 2018 Jan 15;58(1):49-58. - https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5785697/
この論文では腰椎椎間孔狭窄症という病気(椎間孔を通過する下肢に分布する神経が圧迫されて下肢の痛みが生じます)に対する適切な治療方法に関して論じています。顕微鏡で狭くなった椎間孔を拡大する手術をした21例を、再手術が必要になった7例と再手術の必要の生じなかった14例に分けて、何が違うのか解析しています。解析した項目は比較的単純で、手術前後の単純X線撮影からわかるファクターです。そのファクターの中で、preoperative disc wedging (DW) angle(手術前の腰椎前後像X線撮影で腰椎がどれだけ曲がっているかを示す角度、図1)が、再手術が必要になるかどうかの大きなファクターであることを示しています。症例が少ないため実際何度以上が、再手術になる可能性が高いかは示していませんが、DW角度が高い症例では、再手術(著者らは全例腰椎椎体間固定術を行っています)が必要になることは明らかです。
私も同様の手術を顕微鏡でなく内視鏡でこれまでに100例くらい行っていますが、DW角度の重要性を認識しています。現在は患者さんにDW角度が高いと再手術になる可能性がありますとだけ説明していますが、ちゃんと自分のこれまでの経験をデータ処理して、「DW角度が何度なら再手術ですね」と患者さんに説明しないとならないと思っています。手術をするだけでなく、一度立ち止まってこれまでの経験を解析し、具体的に数値で患者さんに説明できるようにしないといけないのは医者の使命です。この論文を読んで、再度論文を書くことの重要性を再認識致しました。客観的なデータを示すことで、患者さんにも安心して内視鏡手術を受けて頂けるよう、腰椎椎間孔狭窄症に対するデータを早急にまとめようと思います。
追伸:岩井FESSクリニックの場合再手術の腰椎椎体間固定術になっても、約2cmの皮膚切開のFESSで治療できることを申し添えます。この手術手技に関しては、後日詳細をこのサイトからもお伝えできればと思います。
論文の図1から抜粋しています。DW角度は図のように腰椎単純X線の前後像で計測しています。どれだけ腰が斜めに曲がっているかを示す指標です。
図1:Copyright © 2018 The Japan Neurosurgical Society
写真はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示 – 非営利 – 改変禁止 4.0 国際)のもとに掲載を許諾されています。
古閑比佐志
- 資格・所属学会
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日本脳神経外科学会 専門医
日本脊髄外科学会認定脊髄内視鏡下手術・技術認定医
日本脊髄外科学会
日本整形外科学会
内視鏡脊髄神経外科研究会
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