私の大学の同級生である徳田安春医師(群星沖縄臨床研修センター長)が文藝春秋に記事を書いていたので、少し紹介したいと思います。詳細は文藝春秋2019年10月号を購読していただきたいのですが、がん医療の新常識という特集テーマで数名の専門家の一人として、彼の意見を述べておりました。この特集の中で、徳田医師は、適切ながんの検査や治療は何かと「ファクト・ボックス」を用いて大変わかりやすく説明しています。
「ファクト・ボックス」とは、検査や治療など様々な医療行為について、「もし1000人が受けたとしたら(受けなかったとしたら)どうなるか」をわかりやすく示した表のことです。彼は大腸がんを例に挙げて、検診をしても1000人中1人しか大腸がん死を免れることができず、更に検査による不利益(擬陽性など)が生じる場合があることも示しています。同じようなことが乳がんや前立腺がんでも言えるようです。がんだけでなく薬物療法にも、同様に我々が思っているような効果が実際には得られていないことを「ファクト・ボックス」を用いて示してくれています。
結論としては、エビデンスの確率していない医療行為(「ファクト・ボックス」を用いても明らかに有効と思えない診断や治療方法)より、エビデンスの確率した予防医学(禁煙や食事療法など)が重要であるとのことでした。まさにその通りだと思いました。
その一方外科医がやっている医療行為はどうなのかと考えますと、「ファクト・ボックス」で示せるようなエビデンスがなかなか得られにくいのではとも思います。それは外科的治療の標準化が難しいからです。例えば私が治療している「椎間板ヘルニア」などですと、様々なタイプの「椎間板ヘルニア」があるばかりか、手術する外科医の技量によって全く治療成績が異なってきてしまうからです。そのあたりをどのように「標準化」して評価していくのかが、今後の課題かと思います。外科医の技量という点を標準化するために、現在私自身が手術した数百例の「椎間板ヘルニア」について、MEDとFESSという異なる治療方法でどちらが優れているのか解析を進めています。そのうちこのサイトでもご紹介できることと思います。
古閑と徳田医師との対談をDoctor’s Gate様のサイトで公開しております。よろしければ、以下リンク先からご覧ください。
- 古閑と徳田安春医師との対談
- https://www.drsgate.com/company/c00072/
古閑比佐志
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